スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

臨床を見ると言うこと。

まるで水泳の息継ぎのよう、短い呼吸を繰り返すたび細くなってしまった首の筋肉が必死に動いているように見える。何故こうなってしまったのだろう…つい今週の月曜日のことだった。主人からの電話で、主人の妹のゆみちゃんが癌で入院したと聞いた。週末にでもお見舞いに行ってみよう…そういっていたが、木曜日の午後には病院から連絡が入り、危ない状態だという。取りあえずその夜埼玉の病院へ向かった。ゆみちゃんにあうのは実に10年以上振り。考えればあまりにも薄情でご無沙汰をしてきたが、それにも訳があり、彼女の旦那さんは事業に失敗し、多額の借金を残し蒸発してしまったのだ。連絡をしないでほしいと言っていたことを聞くと、そのまま様子を見ようという気分になってしまった事と、和馬が交通事故にあい、半年の入院やその後の学校への送迎などで人の事を心配する余裕がなかったのが正直なところだった。
女で一つで二人の男の子を育てた。和馬より一つ年上の長男は夜学に通いながら家計を助けた。次男は達也と一緒なので今年高校を卒業し、無事就職も出来た。彼女にとっては、やっとここまで来た。これから少し楽になると思っていたに違いない。その彼女が異変に気づいたのは3月位らしい。食欲が落ち、お腹が堅く膨らんできた。下痢もする。あっという間に15キロ落ちたという。それでも痛みは無かったらしい。あまりの変貌に驚いた友達が救急車を呼んだのだが、お腹の中は癌と思われる臓器が堅く腫れて、とても開腹出来る状態ではなかった。したがって病理検査もしてないが、おそらく癌だという事は間違いないだろう、と言った。そして彼女はハッキリと自分の意見を先生に伝えていたのだが、痛みが出た場合は薬を使ってもらいたいが、延命や気休めの為の薬は子どもに負担がかかるので止めて欲しい。栄養もいらない。ただ希望は家に帰って身辺整理をしたいということだった。先生は家で最後を迎えさせたいと家の近くの医者の手配を考えていた矢先、容態の悪化で叶わないこととなったのだ。
随分頑張ってきたのだな…。蒸発してしまってから会ってないらしいと息子から聞いた。彼の実家にも連絡をとっていなかったらしい。
祖母のお葬式にも生活が大変だという理由で戻らなかった。全部独りで背負っていたのだ。私の知るゆみちゃんは背が高くて立派な体格だったが、今目の前の彼女はまるでミイラを思わせるほどやせ細り、その顔から昔を感じる事は出来ない。足はパンパンに浮腫でいるが、その爪のピンクと持ち前の色の白さが、まるで中学生の足のようで上のやせ細った腕、首顔との違和感を感じざるおえない。
昨晩一晩中付き添ううちに、身体の動きも小さくなって、ひっきりなしに動いていた腕や手も今はピクリともしない。ただ、同じリズム、同じ深さの呼吸を繰り返すだけ。
今、身体を監視するモニターを付けると言った。私たちは何をしているのか…ひとりの女性の臨床を視ようとしているのだ。死ぬのを待っているって言うことである。
彼女を見て、自分が死に方を選ぶということを改めて考えた。
長い間、離婚もしないで引っ越しもしないで生きてきた彼女に、蒸発した旦那様を今でも好きなの?と聞いてみた。何も答えはしなかったけれど…。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ひろこp

Author:ひろこp
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。